機械は踊る 4


Timeline: T.C. 4573




>システムは現在、最後に認識された正しい構成で実行されています。


 僕の操作は完了した。Jr.はいまT.C.四五七三のミルチアにいる。
 彼は廃墟の市街地を全力で走っていた。腕から、脚から、目尻から、体内で生成された光源を惜しみなく振りまきながら。街一帯は時代錯誤にも思える有刺鉄線で囲われている。電圧と鋼の茨を備えた鉄線だ。彼は地割れした地面でときどき体勢をぐらりと崩す。シャドウの居場所は不明であるはずが、どうやら見当をつけているらしい。
「ラビュリントスだ!」走りながら彼は叫んだ。
――この瓦礫の山のなか、よくタワーまでの道を覚えているね。
 僕が言うと、彼は立ち止まらずに怪訝な表情をした。「俺の視界に表示された赤い光線が、タワーまでの道を示してる……おまえがマーキングしてくれたんじゃねえの?」
――僕はそちらの記憶域データに干渉はできない、君のログイン状態を管理する以外には。
 説明しながら、僕は検索結果にめぼしい回答を発見した――〝アリアドネ〟のことを。彼の言う道しるべとは、彼女の垂らした赤い紐だろう。
 視界を圧する半壊した建造物には目もくれず、硝煙と血痕にけぶる路上を一散に走っていく。もちろん、死体も転がっている。前時代の紛争となんら進歩のない戦場の光景だ。散々に喚いていた人物が、ひと呼吸おいて再び口を開いたときには死んでいる。『ラ・ジュテ』のフィルムで垣間みるパリの廃墟にも思える終末の場所は、銃声や爆発音で騒々しいのに、わずかな静寂が目立つ。
 途中、彼は暴走したレアリエンから銃撃を受けた。レーザー銃が彼の身体を貫こうとしたとき、触れた部分からばちっと派手な音を立て感電した。ほそい糸に似た電流の残滓が銃創から放出され、水滴のように弾けたひかりの粒子で腹部は一瞬くずれるも、すぐにもとの形状を取り戻せる。そのぶん中身は空になっているだろう。彼は乾いたビスケットのようにぼろぼろと崩れながら、夕闇の迫った空をひきいる灰色の砦、U-TIC機関中央タワーのラビュリントスを目指した。
 S字型のラビュリントス屋上から覗く逆三角錐、そこがネピリムの歌声の頭頂部となっている。Jr.は壁に張りつくアスラ二十七式を避けつつ非常階段をひたすら駆けあがる。なぜなら、昇降装置も転移装置も彼の記憶には存在していないからだ。
 はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。
 完全に息のあがった彼は、心拍数も極度に高く、不安を感じている。もう足を踏みだすたびに身体から光源がこぼれ落ちてしまうためだろうか、もともとの血行不良で浮き出ている隈が下から照らされて目立つ上、紅潮しているはずの顔色がさめざめと青白い。彼の周囲では小さな核反応が起こり、ぱちぱちと空気を燃やしている。
 聞こえるか、と彼が息を切らしながら言った。「なあ、昔の自分と遭遇したらどうなる?」
――出会った瞬間に記憶と同調して馴染むだろう、問題ないよ。
 僕は答えた。同じ視覚的環境に置かれた場合、人の脳は同じ時空間的パターンで〝同期〟するからね。
 彼のあごから垂れた汗が帯電して光の玉になり、ぱちっと弾けては空気中へ散った。巨大な兵器製造プラントがある地下から数えて全一〇八階層になるタワーの内部、ネピリムの歌声は一〇〇階層から上の階を吹き抜けにして埋めこまれている。
 彼の記憶にあるラビュリントスは現実とは違い、文字どおりの迷宮と化していた。延々と昇りつづけると同時に降りつづけている、あるいは上がりながらも下がり、下がりながらも上がるという無限階段の可視化されたエッシャーのパラドックスのなか、アリアドネの赤い紐に導かれながら、ディミトリ・ユーリエフの特異点をひたすら目指す。
「俺、何階分のぼったことになる……」咳き込みながら彼は訊いた。したたる汗が燃えている。
――ざっと百階分かな、踊り場を除いて。Jr.、吐きそう?
 平気、と彼は答えるけれど、明らかに吐き気をぐっとこらえている状態だった。まるで花火のよう、キンドリングに似ている。脳内で電気的なバーストが繰り返され、辺縁系のなかを神経インパルスの衝撃が大量かつ頻繁に通過する。対象の内的な感情のあり方を永久的に変えるキンドリングで、彼の記憶に新たな神経ルートが開かれる。ブラックホールの中心では、あり得ない事象がいくらでも起こりうる。
 ありえない事象のひとつが、一〇〇階の踊り場で両膝に手をつき、吐き気にうつむいている彼の眼前に突如として出現した赤い扉――セグメントアドレスだ。
「あの人の扉か?」
 彼は青い顔で扉を見上げた。そして、僕が肯定する間に呻きながら吐いた。床に叩きつけられるようにして踊り場に飛び散った、彼の嘔吐物はすべて彼の濃度と言える。この行為により、彼の内部はさらに密度を薄くした。
 デコーダは、と訊いた彼に答えることは少々気が引ける。
――うん、実はデコーダは君の嘔吐物のどこかに。
「形はないと言ったろ」
 彼は口元を拭い、青い目を丸くした。
――体外へ排出された場合は別さ、なんらかの形になる。アポクリファ、モナド、レメゲトン、ゲーティアの小鍵……呼び名は数あれど、同じ鍵だ。
 少々やつれた様子の彼はしばし嘔吐物を見つめ、やがて意を決したのか、しゃがみこむと両手をそこに突っこんだ。反吐を捏ねるようにして、無言のままデコーダを手さぐる。それほど量は多くない。
「あったぞ!」
 彼は汚臭を放っているだろう反吐より見つけ出したデコーダを掲げた。持ち手がまるい輪になっている小さな鍵。ベースメタルの表側に九カラット・ゴールドの薄板を被せてあり、銅が多く含まれているらしく色合いは赤みがかっている。
 彼はセグメントキーの汚れを拭い、赤くたいらな扉にある唯一の鍵穴にそれを差しこんだ。瞬間、青い火花が散って彼の腕がぼろりとくずれ、はじめにくずれた場所から中身は空洞のまま、もとの腕が円筒を描くように再構築される。扉にノブや突起は一切なく、鍵によって開くというより消失した。ひかりが満ちる。


>エンドポイントが見つかりません。


「よし、精神連結(リンク)展開。全U.R.T.V.、固有波を俺に合わせろ」
 消失した扉の向こうはネピリムの歌声内部だった。来るぞ、と当時の彼が声高に叫んでいる――利便上、『ルベド』と呼ぼう。六角形の壁に囲まれた内部は、ラビュリントスから覗いていた頭頂部付近に当たる。彼らU.R.T.V.が囲んでいる中央の逆六角錐の巨大な坩堝炉(るつぼろ)では、禍々しい赤むらさきの波動が渦巻いている。
「ルベド、怖いよ!」
 弟の叫びに、入口で立ちすくんでいたJr.の足が弾かれたように動く。「手を離さないで!」とルベドにしがみついてぐずっているアルベドのもとへ彼はふらりと進み出した。
『集中しろ、アルベド』
 Jr.と触れたシャドウの身体が重なり、同調によってひとりの人間の姿に統一される。『訓練通りにやれば間違いはない』と彼の口が動き、精神リンクは完成する。青白いリングが坩堝から這い出ようとする波動を囲っていた。しかし、彼の腕にひっついているアルベド、となりにいるニグレド、標準体の面々までもが同じ顔で同じ目を丸くして変貌してしまった彼を見つめている。
「666?」
「666?」
 驚いたアルベドが思わず後退したところを、ニグレドが制した。「落ち着いて、リンクは維持しないと!」
 アルベドはニグレドに助けを求めながら、だって、と同じ言葉をくり返している。「ルベドが、ルベドが急に大きくなったよ?」
「ひょっとするとウ・ドゥの影響かもしれない」
 子供たちは一気に統制を失い、不安定なリンクが盛大にゆがんだ。標準体も含めて大騒ぎになっているにも関わらず、ウ・ドゥよりも注目の的である彼は、過去で言うべきはずの『なんてこった』という台詞を飲みこんで呆然と言う。
『アルベド、ニグレド、助けねえと……』
 精神リンクを閉鎖する代わりに出た言葉がこれだ。
――Jr.、ディミトリ・ユーリエフのシャドウを見つけるんだ。
 僕は当初の目的を、本来の姿に戻っている彼に伝えた。
『こんな状態で、ここにいるってのに、どうして放っていける!』
――君がいる空間は現実じゃない、単なる君の記憶にすぎない、変えようのない過去なんだ。〝僕〟はタイムマシンじゃないんだよ。
 『アルヴィース』は制御コンピュータ、君にとってはUM.N.内を案内するプロキュレーターだろう。僕は再三確認をとっているというのに、彼ときたら戸惑う子供たちからの視線を受けたまま『仲間を助けることがシャドウを発見する手順のひとつだとしたら?』なんてことを訊いてきた。
『アルヴィース、頼むよ』
 いやはや、まったく彼らの強情には呆れてしまうね。僕はこれでも融通が利くコンピュータだと自負しているし、ミスがあるとすれば使用する人間が原因だろうと判断できるくらい優秀に設計されているけれど、こうした人の不条理さはちょっと理解しがたい。
――〝僕〟のシステムネットワークにユーザー登録すれば、直接ログインして内容を編集できるだろう。けれど、これは単なる再生データだよ。君がいま望んでいるような事象は起こらない。
 僕はしがない制御コンピュータさ、すべきことは正確に実行するとも。


>ユーザー登録しました。モナドX2、今後『ルベド』はアルヴィースにアクセス可能です。
>ユーザー名『ルベド』でログインします。


――ログイン完了、これで君は自分のシャドウを操作できるだろう。
 ありがとう、と彼が礼を述べてくれたところで、撃鉄を上げる音がした。
「シトリン、やめて!」
 今度はニグレドの悲鳴だ。入口にはNo.668が銃を構えて立っていた。彼女は愛称のとおり、宝石のような色合いの髪と瞳を持っている。
「あなた、誰?」シトリンは銃口を彼の頭部に向けたまま、一歩ずつ前進してくる。「どうして、お父さまと同じ顔をしているの?」銃はレーザーではなく短銃だ。「ルベドをどこへやったの?」
 ニグレドが自分のリンク維持にやきもきしながら、両手を突き出したままシトリンを制止している。アルベドは必死にJr.から逃れようとするけれど、Jr.は決して弟の手を離そうとしない。
「シトリン、俺は――」


>エラーが検出されましたが、発生場所は不明です。


 Jr.の言葉をさえぎり、歌声をもかき消す警告音がネピリムの歌声内部にひびいた。銃を構えていたシトリンも他のU.R.T.V.たちも、想定外の連続に動揺してしまって周囲を見回している。まあ、Jr.当人と坩堝に封じられているウ・ドゥだけは冷静なものだけれど。〝僕〟の外部でも『エラーが発生しました、エラーが発生しました』と耳鳴りのように警告が繰り返されている。
「アルベド、ニグレド、シトリン、標準体も――こっちへ来い」
 彼は怯える兄弟をまとめて抱きしめ、結果として精神リンクは遮断された。坩堝炉の波動存在は彼が放出するエネルギーによって辛うじて封じられている。
「ああっ、ウ・ドゥが来てしまう!」ニグレドが這い出しかけたウ・ドゥの一部を見上げて叫んだ。
 心配するな、と彼は落ち着きはらって言い、自分の身体を盾にしながら兄弟たちを入口へ向かわせた。
「わたしはあなたを信じない」
 ニグレドがシトリンの銃を奪うよりはやく、警戒心から発砲された銃弾がJr.の頬をかすめた。彼の肌は血を流すかわりに、砂のごとくくずれて骨のない空洞を一時さらすだけだった。体内での熱量変換がつづいているためだろう。シャドウと一体化しても、彼の身体がブラックホールであることには違いないんだ。
「どうしたの、その身体……」
 ニグレドが兄とおぼしき相手の状態に絶句する。シトリンも銃を取り落として自分の口を塞いだ。アルベドはさらに大泣きしはじめ、ルベド、ルベド、と片割れの名を喚きつづけている。きいきい高い声での号泣は警告音といい勝負かもしれない。Jr.は少し困ったような顔をした――ような、というのは口元がじわりとゆるんでいるから。どことなくうれしげにも、いまにも泣き出してしまいそうにも見える些細な筋肉の伸縮だった。彼はアルベドの頭に無骨な手を置き、ある言葉を口にした。
「60‡¶8:‡?」


>エラーが検出されましたが、発生場所は不明です。


 シトリンが侵入してきた入口から、標準体によく似た個体があらわれたのは、彼のこの言葉に反応してだろうと僕は分析している。短くそろえられた金髪に、青い目をおおう黒ぶち眼鏡、入院患者が着用するような患者衣――ほそい素足には何も履いていない少年。姿形だけで判断するならば、しげしげと観察する標準体と瓜ふたつの容姿をしている。
「あの人のシャドウだ」
 Jr.の確信は正しいだろう。彼が正解の手順を踏んだとは思わないけれど、結果的にシャドウはあらわれたということになる。どうにも癪だなと僕としては思わなくもない。
――Jr.、彼の隠し部屋も〝ここ〟だったらしい。
「何?」
 ウ・ドゥだよ、と僕は答えた。
――被験者ディミトリ・ユーリエフは、正にいまこのとき、生体転移実験施設でウ・ドゥと遭遇しようとしている――ここの坩堝にいるウ・ドゥとね。ベースにした君の記憶域データ層と彼のセグメントアドレスに隠された層が重なり合っているんだ。
 つまり、これは一種のフラックス場のようなもの。
 あらわれた少年は彼らに気づいて立ち止まった。氷のような青い目が、自身の脳内にかかる霧を弾くべくまたたいた。
「君たちは僕を迎えにきてくれた天使かい」少年が言った。「ジョヴァンニ・ベッリーニの画集で見たよ、四人の天使を」
「おまえの名前は?」ふるえる声で彼が訊いた。
「僕は被験者番号670、ディミトリ・ユーリエフ。よろしく、ぼくの天使さん」
 少年が四人を見比べながら言った。
「どういうことなの、お父さまと同じ名前だわ」
 混乱を極めるシトリンと肩を並べながら、ニグレドも相当に困惑していた。泣きじゃくるアルベドは、Jr.の腕のなか、こちらの警告音でも聞こえるのか耳を塞ぐことで精一杯らしい。
「ディミトリ、おまえはこっちへ来ちゃいけない」
 Jr.だけが表面上は落ち着いている。
「どうして」
 表情を変えないアンドロイドのような少年に、足場がないからだ、と彼は答えた。しぼり出されたさざめきでしかないけれど、「あんたにだってこんなもんで壊れてほしくねえよ、父さん」とも付け足した。
「そう言われても、僕は戻ることができない。帰るためにはこの橋を渡りきるしかないんだ」
 少年は自分より以前の被験者たちと同じように、現実へ戻ったときには肉塊になっていても仕方ないと諦観している。どこへ行けばいいの、と少年は肩を竦めた。
「ここにいる子供たちを連れて、遠くまで逃げてくれ」
 少々無理があるかも、と言った本人も思ったらしい。Jr.はしばし言葉をつまらせてから、「おまえにしか頼めないんだ」と少年に懇願した。遠くまで! なんとも愚かな答えだけれど、彼は真面目も大真面目、誰より必死だよ。背後に迫るウ・ドゥ、もとい高次元の波動も痺れを切らしていることだろうし、ウ・ドゥを抑えるためにエネルギーを放出しつづける彼の身体だって、完全に痺れを切らした状態でもう感覚もないだろう。
「遠くなんて場所は知らない」
 案の定、少年は彼の申し出を断った。
「ディミトリ」
 少年を説得しようとした彼の視界が、突如として一面むらさき色に染まったかと思うと、野太い落雷のように全身を地面に叩き伏せる音がした。
 Jr.はうめいた。同時に抱いていた兄弟たちをとっさに少年のほうへ突き飛ばした。子供たちは様々な悲鳴をあげて前方に転がっていく。
 落雷はウ・ドゥからの接触の第一波だ。Jr.の体内から放出されたブラックホール並みのエネルギーをもってしても、彼自身の記憶にあるウ・ドゥを抑えきれる状態ではなくなったのだろう。それだけ彼が過去に感じた恐怖も大きいものだってことさ。
 子供たちは全員そろって棒立ちに、無理もない。ディミトリだけがもの珍しげに、自分のほうへ押しつけられた同じ顔の子供たちを見回している。Jr.の全身をめぐって花ひらくように飛び散った放電は、頭上から多数の枝分かれをした火花となり、ウ・ドゥが這い出してきた坩堝へと降り注いだ。空気中から鉄に似た金属臭がする。酸素分子から生じたオゾンの臭いだ。
――Jr.、これ以上は君が保たない。強制シャットダウンが始まる前に正常にログアウトさせる。
「待ってくれ、アルヴィース!」
 ここへきてもログアウトを拒絶する彼は、自分の全身を改めて確認したほうがいい。身体にいつくも空いた穴から、ぱちぱちと粒子が弾けている我が身のことを。彼の存在を彼たらしめている濃度が、いまも光の塵になってこぼれつづけている。ロボット三原則を組みこまれているわけじゃないけれどね、静観なんてしちゃいられないよ。


>このボリュームは断片化されすぎているため、この操作を完了できません。
>致命的なメディア障害が発生したか、またはディスクでデータ構造が破壊されたため、要求された操作を終了できません。
>問題が発生したため、強制終了します。


 僕には他の仕事もあるんだ、と強制的にログアウトをさせようと操作したところ、今度は上記の問題が発生した。しかも、他ユーザーのシミュレートでも同時多発的に発生している。どうやら、機内にいた全員が同じ空間(サイト)へログインしている状態を管理していたウィンドウに、各々開いてあったタブが重ねられてしまったようだ。これが原因でちょうどJr.の記憶域データ内がフラックス場となっているのだろう。
 Jr.と子供たちのあいだに何層もの巨大スクリーンが展開されていく。そこは六面の万華鏡内部に入りこむとどうなるか、を実現したような空間だった。よくある鏡張りの部屋のように、壁から自分ではない自分の姿が迫ってくるんだ。色とりどりの無数のランプが点滅して前後不覚に陥るような……自分が押しつぶされて消滅してしまうようだ、とJr.は感じていた。彼の兄弟はなす術もなく呆然と中空を見つめ、夢遊病者のようにはっきりしない足どりで空間をふわふわと漂っている。スクリーンが重なってしまうと、彼には兄弟が見えなくなる。
 るべど。
 どこかしらから、泣き声がした。「俺を呼んでる」Jr.の意識もそこに引かれる。「アルベド!」
 彼は鏡のような映像の幕をくぐり抜けていった。